昼に使用する電力量が多いと、電気代が高くなる傾向がありますが、それでもランニングコストはプロパンガスを上回ります。ただ、オール電化は工事費などの初期費用が約40万~70万円くらいはかかります。
オール電化は、機能面や安全面でプロパンガスより優れています。料金に関しては、毎月支払う基本料金を一本化できる点で、プロパンガスより安くなります。
1kwh(キロワットアワー)は、電力料金を計算する際の単位で、この電力は、だいたい、電気ストーブやホットプレートなどを1時間使い続けた時の電気の使用量となります。プロパンガスとオール電化のどっちが安いかを比較する場合には、1kwh当たりのエネルギーコストが基本概念となります。
1kwh当たりのエネルギーコスト
ちなみに、都市ガスは、12.10円/1kwhとなります。
(詳細は⇒エネチェンジ「オール電化とガスはどっちがお得!?」)
このデータだけ見ると、昼の時間帯は、プロパンガスの方が料金が安く、夜の時間帯はオール電化の方が料金が安いことになります。
一般家庭での熱源は、ガスと電気を併用するのが普通です。オール電化とは、一般家庭での熱源の一切を電気で賄う方式のことを言います。
ガスと電気を併用すると、毎月、ガスと電気の基本料金を支払う必要があります。プロパンガスの毎月の基本料金は、都道府県やガス会社によっても異なりますが、金額は1,500円~2,600円程度です。関東地区の場合、平均で1,584円となっています。
(詳細は⇒プロパンガス料金消費者協会「プロパンガスの基本料金」)
一方、東京電力によると、平均的なガス併用住宅は30A契約、基本料金は約842円です。平均的なオール電化住宅は6KVA契約で基本料金は約1,296円です。
東京都の一般家庭を想定した場合、ガスと電気を併用する場合の毎月の平均的な基本料金は1,584円+842円=2,426円です。他方、オール電化の場合の毎月の基本料金は平均で1,685円です。基本料金を一本化している分、オール電化の方が差し引きで毎月741円お得なことになります。
一見ガスよりも高く感じますが、その差は3,105円。一般家庭の電気代の平均が11,000円前後なので、トータルではオール電化のほうが安くなります。
東京ガスによると、一般家庭でのガス平均使用量は32m3/月です。また、一般社団法人・プロパンガス料金消費者協会によると、東京都のプロパンガスの基本料金は1,500円、従量単価が280円/m3。
よって、平均的な家庭のガス料金は1,500円+32m3/月×280円/m3=10,460円となります。この他、併用して使用する電気の電気料金も発生します。
一方、東京電力によるとオール電化住宅の電気平均使用量は660kwh/月となっています。この使用電力だと6VKA契約となり、基本料金が1,685円/月、従量単価は夏期で約18円となりますので、オール電化住宅の1月当たりの電気料は1,685円+660kwh/月×18円=13,565円となります。
料金面ではガス料金がかからない分、オール電化のほうに軍配が上がりました。次は料金以外の面で比較してみます。
プロパンガスとオール電化のどちらが安全か
安全面ではオール電化、復旧の速さではプロパンガスのほうがメリットがあります。
プロパンガスは、ガス漏れや不完全燃焼といったリスクがあります。また、調理等には火を使いますから、火事の危険が高くなります。オール電化の場合には、ガスを使いませんし、HIクッキングの場合、火を使わないので、その点でも安全です。
一般的には、オール電化の方がプロパンガスよりも安全性が高くなります。ただし、災害復旧という観点からは、プロパンガスはガスボンベをセットし直すだけで使えるようになるので、災害発生後、すぐに熱源が得られるという意味においては、プロパンガスの方に分があります。
プロパンガスとオール電化のどちらが機能的か
暖房ではプロパンガス、調理でのお手入れではIHクッキングヒーターに軍配が上がります。
暖房で部屋を暖める場合には、ガスファンヒーターは起動が早く出力も大きいため、より早く温まります。オール電化にしてエアコンで部屋を暖める方式だと、部屋が十分に暖まるまでに時間がかかりますので、特に冬の寒さが厳しい地域では大変です。
調理に関しては、オール電化にするとIHクッキングとなりますが、IHクッキングは、最近では機能が改善されてきているため、ガスガスコンロとほとんど遜色のない調理が可能となっています。料金の話を別にすると、IHクッキングの方が手入れが簡単な分、より優れているとも言えます。
プロパンガスとオール電化を比較する際のポイント
オール電化を考える場合には、いかにして、昼に使用する電力量を減らし、夜に使用する電力量を多くして、ランニングコストを下げていくかということが、重要なポイントとなります。
プロパンガスとオール電化を比較した場合、機能的にはオール電化の方がより優れています。光熱費の管理も、オール電化の場合、電気で一本化できますので、より簡素になります。
しかし、オール電化の場合、導入時の工事費等の初期費用(40万円~70万円程度)がかかりますし、その後、ランニングコストが安くなることによって、初期費用を回収できると言っても、オール電化によってどの程度のランニングコストが削減でき、初期費用の回収までどの程度の時間を必要とするかについても、はっきりしません。
電気を使う時間が昼に集中すると、仮に毎月の基本料金を一本化できたとしても、ランニングコストもオール電化の方がプロパンガスより高くなります。
オール電化の方が機能的に優れているので、料金がオール電化の方が高くなっても問題はないのですが、あまり高すぎると、やはり、プロパンガスの方がよかったという話になります。
東日本大震災(2011年3月11日)発生前はオール電化が一時ブームになっていましたが、震災による原発事故で電力料金が約35%値上げされました。
上記の計算例では、標準的な世帯の1か月あたりのプロパンガス料金の平均金額は10,460円で、オール電化住宅の標準的な世帯の1か月あたりの平均電気料金は13,565円です。
これだけみるとプロパンガス使用世帯ではプロパンガス料金の他に電気料金もかかりますから、オール電化の方が随分と料金が安いことになります。
ただし、オール電化の場合には初期費用が100万円程度必要ですし、エコキュートの耐用年数が短く故障も頻繁に起こるのでメンテナンス費用が結構かかります。長期的な視点で考えた場合、プロパンガスを使用したほうが安いのかオール電化にした方が安いのかははっきりしません。
電力料金が上昇した現在のオール電化が置かれた状況
震災前の電気料金が安かった時期にはオール電化の方に分がありましたが、震災で電力料金が上昇した後は、どっちが安いかは微妙になってきました。
さらに、大震災では自宅にボンベを取り付けるだけで使用可能になるプロパンガスがすぐに復旧したのに対して、オール電化の復旧には時間がかかりました。
震災が起こったのは2011年3月11日ですが、プロパンガスが完全復旧したのが4月21日、電力が完全復旧したのが6月18日となっています。
(詳細は⇒東日本大震災で発覚した-ライフライン復旧スピードの全貌)
東日本大震災以降も度々災害が起こっていますが、そのために災害に強いプロパンガスのメリットは大きくなっています。
その反面で家庭のエネルギーをすべて電力で賄うオール電化は災害等で電気が止まると、家庭内のエネルギーがすべて止まってしまうのでリスクが大きくなります。
東日本大震災後は電気料金の上昇と災害時のオール電化のもろさが認識されたため、オール電化ブームが終わって、プロパンガスが再評価されています。
オール電化でソーラーパネルを設置している家庭で、蓄電池や電気自動車がある家庭ならばメリットも多いでしょう。もちろん、プロパンガスや都市ガスを利用した方がメリットが多いという方もいます。各家庭でピッタリの方法を考えていきましょう。
東日本大震災後の電気料金の値上げでオール電化ブームは去りましたが、オール電化の普及はプロパンガス業界に大きな影響を与えたと考えられます。
オール電化は災害に弱い点や初期費用が高い(100万円程度)点やメンテナンス費用が高いなどのデメリットがあります。
震災後の電力料金の値上げがあった後の比較でも、上記例のとおり1か月のオール電化の平均的な電力料金は13,565円で、プロパンガスの1か月の平均料金は約10,460円です。プロパンガスを使う世帯だとこの他にも電気料金(基本料金+重量料金)がかかり、結局はプロパンガスのほうが高くなります。
オール電化は初期費用やメンテナンス費用が高いので、プロパンガスが多少高くても競争力がありますが、あまりガス代が高くなるとプロパンガスの競争力がなくなります。
例えば上記のプロパンガス料金は(一社)プロパンガス料金消費者協会が提唱している適正単価を使っていますが、これを東京都の平均単価で計算し直してみます。
石油情報センターが公開している2018年6月の東京都のプロパンガス料金の平均値は基本料金が1,699円、従量単価が506円/㎥です。よって、1か月のガス使用量が32㎥の平均世帯の平均ガス料金は1,699円+@506円×32㎥=17,891円です。
プロパンガスの平均料金で計算すると、この世帯の1か月あたりのプロパンガス料金はガス料金だけでオール電化をはるかに上回ります。プロパンガス適正料金(10,460円/月)であればプロパンガスを使ってもよいが、平均料金(17,891円)であればオール電化に切替えたいという人が続出するのは明白です。
プロパンガスが今後も消費者に選択され続ける(オール電化に対して競争力を維持していく)ためには、プロパンガス料金の適正化が行われることが不可欠であると言えます。
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